井山 敬介
-Keisuke Iyama-
スキーをやっていて良かったことは?
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100年に一度の大不況。こんな厳しい話が耳に入ってくる今日この頃。でも考えようによっては景気回復の始まりでもあるのだ。ある意味そんなチャンスがある僕たちはなんだかんだ言っても少しだけ幸せかもしれない。
2009年9月で、北海道スノースポーツミーティング実行委員会が立ち上がって3年目を迎える。
今までにさまざまなイベントを開催し、先シーズンは札幌市内にある小学校のスキー授業をさせてもらったりもした。
「北海道からスノースポーツを盛り上げよう!」という気持ちで僕たちは全力で動いている。スノースポーツミーティング実行委員会は道内のプロスキーヤー、プロスノーボーダーはもちろん、あらゆる関係者の方々に協力してもらっている。
「第1回スノースポーツミーティングinばんけい」には、約250名のスキーヤーとスノーボーダーが集まってくれた。
参加者の全員にアンケートに答えてもらい、そのなかに「スキーやスノーボードをやっていて良かったことは?」という質問項目を作った。僕たちはとくにこの答に注目していた。今このコラムを読んでくれている皆さんも少し考えてみてほしい。
スキーをやっていて良かったことは何ですか?
参加してもらったほとんどの皆さんの答は「人との出会い」だった。意外だった。やはり「滑っているときの気持ち良さ」や「技術上達の喜び」という答が多いだろうと予想していたからだった。
そうした答がまったくなかったわけではないが、多かったのは「人との出会い」だった。実際に僕もアンケートに答たが、この質問には「人との出会いが良かった」と書いていた。
僕自身スキーをやっていて本当にたくさんの人に出会っている。世界中に国籍の違う友人もたくさんいる。僕のまわりにはスキーをやっていなければきっと出会うことはなかったすばらしい人たちがたくさんいる。
「人との出会い」。
これからもスキーをやっていくうえで、いやこれからの人生を生きていくうえで本当に大切にしていきたいことである。
そう言えば、スノースポーツミーティングが立ち上がったきっかけも、人との出会いからだった。
僕はプロスキーヤーの児玉毅(タケ)さんと飲みに行くことが多かった。ふたりで「スノースポーツがもっと盛り上がればなー」という話を酒の肴にして飲んでいた。
酔っぱらえば酔っぱらうほどに良い話が出てくるのだからお酒ってすばらしい。
もしかしたら情熱いっぱいに語り合っている自分たちに酔っていたのかもしれないが、「こんなこともやりたいよな〜」とか「あれをもっとこうしたり」などなど、どんどん良いアイディアが出てくるのだ。
だが、やはり酒の席である。僕もタケさんも良い話をしていたことは憶えているのだが、肝心な話の内容をまったくと言っていいほど憶えていなかったのだ。
みごとなふたりの夢物語。そんなときにひとりの男がいつもの酒の席に現われた。現在のスノースポーツミーティング実行委員長である森脇俊文さんだ。類は友を呼ぶ。みごとに化学変化が起きた。人との出会いのすばらしさをまた感じた瞬間だった。
いつものようにビールで乾杯し、いつものようにエンジン全開で熱く語り合う。でも、何かがいつもと違った。
森脇さんはメモを取りながら語っていた。これだった、僕とタケさんにはなかった肝心なところは。スノースポーツミーティングをやりたいと言い出したのは森脇さんだった。
もちろん僕もタケさんも反対する理由はない。メモもある。このプロジェクトが立ち上がってもうすぐ3年になる。きっとあのときのメモがなければずっと夢物語で終わっていただろう。
先日、森脇さんと話したときに「本気で向き合ってきて、こうして多くの人たちが協力してくれるようになった。このエネルギーの源は“ただ雪山が大好き”という思いと“行動力”だよ」と言っていた。
僕はこのふたりと出会って本当に良かったと思う。スノースポーツミーティング実行委員会を通じてたくさんの方に良いアイディアと行動する力をもらっている。チャンスはきっとすぐそこにある。
● 記事提供=月刊スキージャーナル(2009年9月号掲載)
PROFILE
井山 敬介 -Keisuke Iyama-
1978年 北海道富良野市生まれ
幼少の頃から地元・富良野の雪に戯れて育つ。アルペンレーサーとして早くから頭角を現わし、札幌第一高校時代にはナショナルチームに所属、ワールドカップに出場するなど、数々の実績を残す。
2000年から技術選に参戦。毎年着実に順位を上げ、2007年はみごとに初優勝、そして2008年には連覇。2014年に3度目の優勝を飾る。
現在も技術選でトップ争いを繰り広げるほか、子供たちへの『雪育』活動にも尽力。スキー界の振興に向けて、第一線で活躍を続けている。
全日本ナショナルデモンストレーター、ばんけいスキー学校所属
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