井山 敬介
-Keisuke Iyama-
親ばかの集い
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気がつけば、ここにコラムを書かせてもらって1年以上が過ぎた。不定期ではあるが約2カ月に1回のペースで登場させてもらっている。今までに書いたものを読み返してみると、なんとも親ばか丸出しであるが、やはり自分の息子の話が多い。
歴史あるスキー専門誌で偉そう語れるほど子供には何もしてやれていないが、誰よりもスキーを楽しんでいる父親という姿は息子に見せているつもりだ。
そして、そんな僕自身も、幼い頃から誰よりもスキーを楽しんでいる親の姿を見てきた。これは井山家の血筋なのかもしれない。
先日、自他ともに認めるスキーバカ、親ばかさんたちの集まりで「親ばかの集い」という会に参加させてもらった。
その名のとおり、参加している親ばかさんたちの子供たちに対する〝スキー体制〞は申しぶんなく整っている(というより、どんなことがあっても無理矢理にでも整えている)。
とにかくその熱意がすごい。参加していたほとんどの方が会社の有給休暇は夏には絶対に使わずに冬に取っておき、大変な仕事は冬に入る前に気合いで終わらせる。
子供たちの大会では子供たち以上に盛り上がるのが基本。そして何より、僕の父と同じように、今回参加している親ばかさんたちも自分たちが誰よりもスキーを楽しんでいる。
そもそも、どうしてこの集いに僕が参加させてもらったのかというと、本誌の読者でこのコラムを愛読してくれている方が、僕の親ばかぶりを見て誘ってくれたのだ。
お誘いをいただいたときは『もうすでにに君は立派な親ばかの一員だよ!』とでも言われたかような気分だった。
集いには、SAJデモであり僕の幼い頃からの親友である百瀬純平君も来ていた。ふたりの男の子の父親である彼は立派なスキーバカであり、思いっきり親ばかである。彼も立派な集いの一員なのだ。
そして、そんな彼の両親も、集いに参加している親ばかさんたちと同じである。スキーが大好きで、僕たちが子供の頃の大会では子供たち以上に盛り上がっていた気がする。いや、まちがいなく盛り上がっていた。
ビールで乾杯し、総勢約15名の親ばかたちの記念すべき第一回「親ばかの集い」が開かれた。まずは軽く自分たちのスキー談義だ。
軽くのつもりが持論のスキーテクニックや、それぞれの目線で見た技術選の話など、これだけのメンツが集まれば盛り上がらないわけがなく思わずヒートアップしている親ばかさんもいた。
もちろん、僕も純平もヒートアップしていた。同じモチベーションで、同じ心拍数で熱い話ができることほどうれしくて楽しいことはない。
だけどこの会の名前は「親ばかの集い」。もちろん子供たちの話にならないわけがない。大先輩たちの親ばかぶりはさすがであり、子供のしつけ方などもそれぞれ個性的でいろいろなおもしろい話が聞けた。
とても刺激を受けるとともに、勉強になることばかりだった。子供は親が思っている以上に親を見て育っているのだ。思い返せば僕もそうだったように思う。
このコラムでも書いたが、そもそも僕がスキーを始めたきっかけは父親にスキー場に連れて行ってもらったのが始まりで、冬になると毎日のようにワールドカップやオリンピック、そして技術選の映像がわが家のテレビから流れていた。
父が強制的に見せていたわけではない。それでも、自然と目に入ってくる映像は子供ながらに楽しかったことを憶えている。父のスキーに対する気持ちが強かったせいか、いつの間にか僕自身もスキーの魅力に引き込まれていった。
そしていつの頃からか将来の夢はスキー選手に。僕の最初の目標は父だった。父よりスキーがうまくなりたいと真剣に思っていた。この世で一番かっこ良くてスキーがうまいのは父だとも思っていた。
ふと、そんな昔のことを思い出しながら親ばかさんたちとビールを酌み交わしていた。
気がつけば閉店時間を過ぎている。そんなことはおかまいなし! といった感じで宴は盛り上がっている。お店の方に申し訳ない気持ちがありつつも、もう少しここにいたい気持ちもあった。
子育てには答はない。
今回参加していた親ばかの皆さんが個性的であるように、その子供たちもみんな個性的だ。ただ皆さんに共通して言えることは、子供たちに真剣に向き合い、そして自分たちが誰よりもスキーを楽しんでいるということだ。
最後に次回の「親ばかの集い」の約束をし店を出た。
家路に着く途中、やはり僕にとってこの世で一番かっこ良くてうまいスキーヤーは、未だに父なのかもしれないと思った。
● 記事提供=月刊スキージャーナル(2009年1月号掲載)
PROFILE
井山 敬介 -Keisuke Iyama-
1978年 北海道富良野市生まれ
幼少の頃から地元・富良野の雪に戯れて育つ。アルペンレーサーとして早くから頭角を現わし、札幌第一高校時代にはナショナルチームに所属、ワールドカップに出場するなど、数々の実績を残す。
2000年から技術選に参戦。毎年着実に順位を上げ、2007年はみごとに初優勝、そして2008年には連覇。2014年に3度目の優勝を飾る。
現在も技術選でトップ争いを繰り広げるほか、子供たちへの『雪育』活動にも尽力。スキー界の振興に向けて、第一線で活躍を続けている。
全日本ナショナルデモンストレーター、ばんけいスキー学校所属
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