井山 敬介
-Keisuke Iyama-
スポーツが教えてくれる
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甲子園の決勝戦が終わると、もうすぐ秋だなぁという感じになる。8月に妻が出産を控えていたこともあって、今年の夏は海外には滑りに行かず、日本にいた。久しぶりの日本の夏。北海道ってこんなに暑かったっけ?と疑いたくなるほど暑い日が続き、わが家にもクーラーを導入するか!?と考えたが、本州の暑さに比べればかわいいものだと新しい扇風機をもう1台買うことにした。
やっぱり夏は暑くないと、なんて言いながら久しぶりに日本の夏を満喫した。何十年ぶりかに盆踊りにも出かけた。子供たちは夏休み、大人たちはお盆休みということで、近所に住んでいる息子の友人・家族と一緒に夜遅くまで、お酒を飲みながら楽しい時間を過ごすことができた。日本の夏もなかなか……いや、かなり楽しかった。
小学2年生になる息子が夏休みに入る直前に野球を始めた。通っている小学校の野球チームに入団し一所懸命にがんばっている。このチームの練習は父兄が手伝うシステムになっていて、時間のあるときには僕も一緒に野球を楽しんでいる。お手伝いに来ているお父さんたちのなかには、名門校で野球をやっていたお父さんや甲子園に出場してあと少しでプロの選手になれた、というお父さんもいる。
たまにキャッチボールをしてもらうと投げてくるボールがなんかすごい。そんなお父さんたちの野球の指導法を聞いているととても勉強になる。投げ方、キャッチの仕方、打ち方、走塁などなど、やはり教えることは基本中の基本。しかも、どうしてそうしなければいけないのかということを子供目線でわかりやすく、しっかりと理論づけて教えている姿には脱帽する。
少年野球をやっていた頃にこんなすばらしい指導者のいるチームに入っていたら、今頃は4000本? 160キロ? 二刀流? なんて考えてしまう。
子供たちの可能性は計り知れない。このチームにいる子供たち全員が甲子園に出場し、プロになり、メジャーで活躍することはむずかしいことかもしれないけれど、可能性はゼロではない。そんな子供たちを見ていると何だか羨ましくも思う。可能性いっぱいの子供たちに何を伝えられるのか? この時期の子供の成長する力やスピードを考えると、できるだけたくさんのことを伝えたいとつい欲張りになってしまうが、何もそんなに欲張らなくてもいいのだ。
一緒に練習に参加してくれているお父さんたちが教えていることは、あくまでも基本中の基本。団体スポーツにおける人間関係や絶対にあきらめないという精神力。一所懸命に、全力で打ち込んで野球というスポーツから学べることをしっかりと学び、将来の人生に活かすことができるようにサポートしていきたいと思う。
入団したばかりの息子はまだまだみんなについて行くことで精一杯だ。まるでウサギと亀のようなスピードの違いがあるけれど、楽しそうに必死にやっている姿が少しだけたくましく見える。毎日の素振りも何だか様になってきた。先日、息子が寝る前に「お父さん、今日の練習で外野フライが捕れたよ。うれしかったなぁ」とつぶやきながら眠りについた。
その言葉から、スポーツのおもしろさや楽しさが伝わってきた。それまで何度も何度も捕れなくて、とても悔しい思いをしたのだろう。亀は亀なりに毎日コツコツと楽しんでいるようだ。
もう少しで産まれたばかりの娘がお母さんと一緒に退院してくる。さて、この子には何を伝えられるだろうか。音楽? フィギアスケート? バレリーナ? ゴルフ? 世界中いろいろなところに連れていって、たくさんの体験や経験をさせてあげたい!
あれ!?
またまた欲張りになってしまっている僕がいる。
● 記事提供=月刊スキージャーナル(2013年10月号掲載)
PROFILE
井山 敬介 -Keisuke Iyama-
1978年 北海道富良野市生まれ
幼少の頃から地元・富良野の雪に戯れて育つ。アルペンレーサーとして早くから頭角を現わし、札幌第一高校時代にはナショナルチームに所属、ワールドカップに出場するなど、数々の実績を残す。
2000年から技術選に参戦。毎年着実に順位を上げ、2007年はみごとに初優勝、そして2008年には連覇。2014年に3度目の優勝を飾る。
現在も技術選でトップ争いを繰り広げるほか、子供たちへの『雪育』活動にも尽力。スキー界の振興に向けて、第一線で活躍を続けている。
全日本ナショナルデモンストレーター、ばんけいスキー学校所属
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